一番の人気商品「プチフール」
取材日:令和5年11月30日
1970年(昭和45年)玉野市出身。宇野小学校、宇野中学校、玉野商業高校(現在の玉野商工高校)を卒業後、1988年(昭和63年)に家業である「なかや宗義(むねよし)」へ就職。27歳で代表取締役に就任。
1946年(昭和21年)に、「なかや製菓」として創立しました。洋菓子や和菓子、クッキー、アイスなどお菓子全般を製造、販売、卸売しています。
市内にある宇野本店と荘内店の売り上げは会社全体の30%で、残りの70%は市外や県外、国外の地域の特産品やお土産、ホテルなどのお菓子、コンビニスイーツなどを製造、販売しています。フランスのニースやモナコ、台湾でのイベントで、日本の本場のスイーツを現地の人へ提供するという目的で声がかかり、どらやきやスイートポテトを提供したことがあります。
祖父母が菓子製造販売業を立ち上げました。祖父母は子に恵まれず、養女と婿養子を迎え入れましたが、その2人が私の両親です。父と祖父は経営方針が違い、父は、現在の荘内店の工場をつくった後、出て行ってしまいました。そのため、高校卒業後、祖父から自分の店で働いてほしいと言われ、18歳で現場入りすることになりました。現場では従業員などから製造の基本を教えてもらいました。
新工場の稼働の事業計画は父が練っており、祖父は知りませんでした。工場建設費用の借入れもあり、お店は大赤字でした。そこから若手の従業員の力で商品開発や商品の見直しを行い、工場も稼働させ、段々と軌道に乗っていきました。「商品はお店の顔」と言うように、商品を見た人から商品開発の依頼が全国から入ってくるようになりました。そして、27歳で代表取締役に就任し、借金を段々と減らしていき、ついに完済することができました。一時は死のうとまで思いましたが、今では「若いころの苦労は買ってでもしろ」という言葉のように、人にはできない経験をして、色々な人とつながり、自分にとって大きな糧(かて)になったと思います。
「自信のなさ」が強みです。冒険もしますが、石橋を叩いて渡るように慎重なところがあります。会社が資金難で大赤字だった時も、「自信のなさ」で色々なことをしてきたからこそ乗り越えられたと思います。
まず、「お菓子1個がお客様の元にいく」ということを意識することです。工場などで大量生産していると、どうしても雑になりがちです。だからこそ、今作っているお菓子はお客様一人ひとりの元にいくことを意識するよう、従業員にも伝えています。
次に、清潔感です。気の緩みから食品事故につながってしまいます。衛生管理は徹底し、「何のためにやっているのか」という基本を大切にして、良い商品を良い形でお客さんに提供できるようにしています。ホテルのお菓子も手がけていますが、ホテルから年に2回、工場の衛生検査があります。かなり細かいチェックが入り、合格しないとお菓子を提供できないので常に気をつけています。
逆にどうやったら切り替えられるか教えてほしいです。本社(宇野店)の上が自宅なので、休みの日も休んだ気がしませんし、仕事が終わっても終わった気がしません。それは、お店の雰囲気を自宅でも感じるからだと思います。
意識して離れる必要があると思い、休みの日は外へ行くことにしています。海が好きなので、船を操縦し、釣りをしたり、周りに何もない海の上でゆっくり過ごしたりするとリラックスできます。
お菓子は買ったまま食べる人が多いと思いますが、一手間加えると違う楽しみ方ができます。
例えば、お店で人気のどらやき「三笠」は、バターを塗って、オーブントースターで温めるとより一層風味が増します。お土産としても人気の「スイートポテト」は、できたては表面が少しサクッとしているので、同じくオーブントースターで温めるとできたての食感を楽しめます。
お店で一番人気は「プチフール」です。色んな種類の小さなタルトケーキが入っていて、大人数でシェアするのに最適です。新型コロナウイルス感染症が流行してからは、ホールケーキを取り分けるよりも、1つ1つ分かれているので好まれるお客さんも多かったです。これから年末年始になり、家族で食べるときに、見た目も華やかで選ぶ楽しさがある「プチフール」はとても人気です。
やはり海です。海の近くに住むとロケーションが抜群ですし、休日は海で遊ぶこともできます。そして、何より見ていると落ち着きます。
私たちの世代の責任でもありますが、現在の日本は大学生でも将来何をしようかと悩んでいる人がいます。将来に輝かしいものが見えない時代なので、若い人でも危機感を持っている人がいます。学びを止めると成長も止まるので、皆さんは考え、学び続けてください。
私は、大学で講師をしていますが、学生から学ぶことの方が多いです。そして、若い人に上から目線で話をしてもささらないと思うので、同じ目線でディスカッションするようにしています。今は、少しでも若い人たちに還元できるように高校生や大学生と商品開発や地域おこしに携わって、持っている知識を伝えたり、お菓子作りの経験からアドバイスなどをしています。
現代は情報過多なので、情報ばっかり収集していると頭でっかちになってしまいます。さらに、自分に都合の良い解釈で情報を変換していることもあります。情報の本質を知り、振り回されないようになってほしいです。
また、お金の使い方やマネジメントを勉強すると良いと思います。日本では、今までお金のことを考えることは、あまりよく思われなかった風潮があり、お金の使い方を教わらず育つ人が多く、自分もですが、お金で苦労する人も多いです。しかし、外国ではお金の使い方を授業で習う国もあります。お金に執着しすぎるのはよくありませんが、お金の流れが分かることは大切です。学生と商品を作る時にも、理想と現実を考えながら、賞味期限や物流コスト、どこにどう売り出すかなどを考えて製作することで、会社として成り立ち、商品になることを伝えています。