本市は、“晴れの国おかやま”の中でも日照時間が長く、「晴れのまちたまの」と言われています。空が晴れているので、夜空に輝く星も美しく見えます。
玉野で星のように光り輝き、活躍する人「たまのスター」のインタビュー記事を連載しています。
第20回は、視覚障害をもつ人のための音訳ボランティア「玉野朗読奉仕の会」会長の山田芳子さん、副会長の梶原美紀さん・藤原正子さんです。
(取材日 10月31日)
梶原美紀さん、山田芳子さん、藤原正子さん
「玉野朗読奉仕の会」は、視覚障害を持つ人に向けた音訳を作成するボランティア団体です。令和7年10月現在58人が所属し、5つのグループに分かれて活動しています。
主な活動内容は、「デイジー(Daisy)図書(視覚障害などにより通常の印刷物を読むことが困難な人へ向けたデジタル録音図書)」の製作です。「広報たまの」など、毎月決まった媒体を音訳するほか、「社協だより」や病院の広報誌など、視覚障害を持つ人から直接依頼を受けて音訳し、デイジー図書の製作もしています。
3年前から、市立図書館で「対面朗読(視覚障害者、手の不自由な人などに対面で朗読をするサービス)」の取り組みも始めており、情報難民といわれる視覚障害を持つ人が、視覚障害のない人と同じように情報を得られるよう、様々な形で「声で届ける」活動をしています。
デイジー図書は、まず朗読原稿を作成し、その内容を録音、そして録音したデータを編集する、という作業を経て完成します。毎月の「声の広報たまの」であれば、録音に2日、編集に1日程度を要します。
活動をする上で心がけているのは、伝わりやすい音訳にする、ということです。音訳作業のうち、どの段階においても、聞く人に伝わりやすい訳にすることを心がけ、会員みんなで利用者の立場に立って、相談しながら作業を進めています。
例えば、より多くの情報を伝えられるよう、文字内容だけでなく、グラフや表、絵、写真などの内容も必要に応じて言葉で読み上げて説明します。また、編集する際にも、聞きやすさを念頭に置いて作業しています。視覚障害のない人が本にしおりを挟みながら読むのと同じように、聞きたいところから何度も聞き返せるように、フレーズごと・ページごと・スペースごとなどの細かな項目付けを行っています。会員は、これらの技術を研修などで学びながら、技術を身に付けています。
藤原さん 「声の広報たまの」を聞いている老人介護施設の利用者から、「今月は、藤原さんの声が聞こえた」と直接感想をもらったことです。音訳についてのフィードバックをもらうことが少ないので、とてもうれしく感じました。
梶原さん 毎月の音訳依頼などとは別に、自主的に録音図書を年1冊作ることを個人目標として課しています。図書を1冊音訳するには膨大な時間がかかりますが、完成したときには達成感があります。
山田さん 以前、デイジー図書を聞いたという人から、感謝の電話をいただいたことがあります。その経験があるから今も続けられていると思えるくらい、とてもうれしかったことを覚えています。また、会長に就任して以降、更に勉強し、朗読奉仕員養成講座の指導者の認定講師になりました。講座内容の刷新を行うなど、レベルの高い音訳者を育てるため日々工夫しながら活動しています。「玉野の朗読奉仕の会はレベルが高い」と言われるようになればうれしいです。
今後力を入れていきたいことは、私たちの活動をより広く周知することです。特に、3年前から市立図書館で始めている「対面朗読」は、未だ利用者が少なく、活動が十分に周知されていないと感じます。私たちの活動を必要とする人にもっと広く届けたいです。
また、録音や編集にはパソコンを使いますが、現在の会員にはパソコンを使える人が少なく、どのグループも作業に苦労しています。今後は、市主催の朗読奉仕員養成講座により多くの人に参加してもらい、パソコンを使える人にもぜひ入会してもらいたいです。
音訳では、目が見えない人にもその光景が伝わるよう、文章だけでなく写真についても、色や形、表情、質感などを表現するそうです。シティプロモーション推進室では、毎月広報たまのを企画・編集していますが、「声の広報たまの」で、自分たちで撮影した表紙の写真が、隅々まで言葉で説明されているのを聞いてとてもうれしく感じました。朗読奉仕の会の皆さんの「できるだけ的確に情報が伝わるように」「相手の立場に立って伝える」という心がけは、障害の有無にかかわらず、円滑なコミュニケーションのためにはとても重要なことだと思います。日々情報発信をする立場としても、改めて背筋が伸びる思いがしました。
広報たまの令和7年12月号