本市は、“晴れの国おかやま”の中でも日照時間が長く、「晴れのまちたまの」と言われています。空が晴れているので、夜空に輝く星も美しく見えます。
玉野で星のように光り輝き、活躍する人「たまのスター」のインタビュー記事を連載しています。
第15回は、地域の文化財を守り伝えていく「玉野市文化財保護委員会」の委員長として活動する北村章さんです。
(取材日 5月28日)
北村章さん
文化財保護委員になったのは20代のころで、今から40年以上前になります。
大学生のとき、日本史を専攻していて、研究のために江戸時代の史料を収めた市の総合文化センターの収蔵庫によく出入りしていました。そこでの縁があり、大学卒業後、公立高校の教員として採用されたあとに、当時の文化財保護委員長から、文化財保護委員にならないかとお声がけいただきました。
実際には、玉野高校に転任となったタイミングの昭和59年から委員会に参加するようになりました。平成29年からは委員長を務めていて、今年で9年目になります。
文化財保護委員会は、文化財保護条例(昭和32年制定)の目的を達成するために設置された委員会です。市の教育委員会から委嘱されて、市内にある文化財の保存とその活用を図るために必要な研究や調査をしています。また、教育委員会の問いに対して意見を述べる、市の諮問機関としての役割も果たしています。例えば、市の重要文化財を指定するかどうかも、文化財保護委員の答申を通して決められることになっています。
年3回の委員会で、今後行うイベントや行事について、活動方針を話し合っています。具体的には、毎年11月の文化財保護強調週間でのイベントの企画運営や、1月に行われる文化財防火デーでの講評などが今年も予定されています。イベントに合わせたワークショップなども予定していて、広く市民の皆さんに文化財について知ってもらうためにさまざまな企画も考えています。
そのほか、収蔵庫にある史料の整理や寄贈資料の受け入れ、目録作成などの作業も行っています。
文化財保護委員になって印象的だったのは、以前、文化財保護強調週間の取り組みの一環として、市民の皆さんと一緒に胸上の三宝院を訪れたときに、偶然新たな重要文化財を発見する現場に立ち会ったことです。そこで祀られている『木造阿弥陀如来立像』は、もともと玉野市指定の重要文化財などではなかったのですが、同行していた宗教美術専門の委員が、岡山市指定重要文化財の『宝積院釈迦如来立像』と類似していることを指摘し、その価値が発見されました。
後日、正式な調査を経て、市の重要文化財に指定されたのですが、イベント内での貴重な体験として、印象に残っています。
毎年8月11日の山の日には、常山山頂で常山女軍供養祭が行われています。特に今年は常山城落城から450年目に当たるということもあり、文化財保護委員会として、市立図書館・中央公民館内郷土資料展示コーナーで特別展示「戦国玉野と常山城―その最新史―」を準備しました。この展示では、常山に関する最新の研究結果を紹介しています。今までは、『常山軍記』や『備前軍記』などの江戸時代の史料をもとに研究が進められてきましたが、近年の研究結果で、より真実に近い姿がわかってきました。皆さんが知っている歴史とは、かなり違った歴史を知ることができると思います。
7月20日(日曜日)には、この展示についての講演も予定しています。常山合戦で最期を遂げた城主上野隆徳と鶴姫の生涯について、今回新たに展示する戦国時代の史料を紹介しながらお話しします。また、その後の常山城の歴史にも触れる予定です。戦国時代の女性たちがどう生きたか。鶴姫たちが戦った戦国時代の玉野に想いを馳せてみてください。
今回、特別展示の行われている中央公民館で取材させていただきました。取材の前に、実際に展示を見ながら、今回の展示の見どころを教えていただきましたが、北村さんご自身が研究された常山の最新史について、笑顔でとても生き生きと語られる姿が印象的でした。教員・研究者として長年歴史を語られている北村さんにわかりやすくお話しいただき、インタビュアーとしてだけではなく、展示の鑑賞者としても、とても貴重な経験をさせていただきました。
歴史というのは、現代に遺された史料を組み合わせて推測していくものなので、容易に答えを知ることができない反面で、長年の研究によって少しずつ実態が明らかになっていく課程がとても面白いと思いました。常山の歴史について、「なるべく真実に近い話をしたい」と意気込まれる北村さんのお話を聞いて、歴史を探究することの尊さ、面白さをより強く実感しました。講演会は7月20日(日曜日)10時からの予定で、展示は令和8年3月下旬までです。
広報たまの令和7年7月号